アイシテル
「――春ちゃん…?」

閉じていた小さな唇を動かして、聖が僕の名前を呼んだ。

「――聖…」

ああ、生きていた。

聖が生きている。

「――春ちゃん、どうしたの…?」

聖が僕の頬に手を伸ばした。

どうしたもこうしたもない。

お前が死んでいると思ったんだから。

「春ちゃん――春海が、泣いているから…」

そう言った聖に、僕は耳を疑った。

今、僕のことを何て呼んだ?

聖がいつも呼んでいる“春ちゃん”ではなく、“春海”になっている。
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