[短編]桜が散るかの如く
私は陸でも海でもありませんでした。
空を舞って戦うのでした。

私が18のとき、
特攻隊へ志願するか聞かれました。


答えなどもう決まっていました。

ほぼ決められているのと同然でした。
私たちに拒否権などないのですから。


答えはもちろん志願する、でした。
いや、熱望する、だったかもしれません。


「文子…」


私は答えを出した時、不意に恐怖を感じました。

志願した者の中から明日飛び立つ者…いや、死にに行く者がその中から選ばれるのか…


文子…

私は願った。

どうか明日ではありませぬように、と。

毎日、毎日願いました。
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