銀鏡神話‐玉響の驟雨‐

第二章 地底の荒野。







「おいっ」

俺を呼ぶのは誰だろう。

俺は、誰なんだろう。

「……起きろ!」

誰だ?

「起きろっつってんだよ小僧!」

痛っ!

頭に激震が走る。

母さんか?

「俺が何時、お前のお袋になった。」

じゃあ……俺は死んで、天国の父さんの元へ来たのか?

「俺が何時、お前の親父になった。」

じゃあ……俺に生き別れの兄さんが居て……

「俺が何時、お前の兄貴になった。」

じゃあ……

「もういいわ!

俺はアイラ・ウォークス。」

何処かで聞いた名前だな。

……そう、守護隊長のアイラ・ウォークスだ。

聖宿祭にいて……

フィルリアと戦って……

嗚呼、全部思い出した、あのおぞましい惨劇……

「俺は……ギルバート・クリスター。」

目を開けると、此処は見知らぬ土地だった。

と言うより、何もない。

延々と広がる荒野。

枯れた木々に、岩に、干乾びた地面。

空も無い。

上に見える、黒い機械的な天井。

「地下なのか……?」

俺の呟きにアイラが即答する。

「みたいだ……

過去に呼んだ聖文書に書かれていた。

煌の力は生の力、地底の楽園への扉を開く。

然も厄介な事に、地底都市はティアズ聖国の正反対に位置する、フィライド帝国に在るとされてんだ。」
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