太陽のかおり
「悪い柊!寝坊した!」
「いいよ、ぜんぜん。大丈夫」
「そっか?悪かったな」

ぜんぜんいいよ、そんなの!

「そういえば今日体育あるよな」
「うん」
「気が向かねえ」
「どうして?体育嫌い?」
「ああ、まあ」
「そうなんだ」
「柊は?」
「私は好きでも嫌いでもないよ」
「そっか」

チャリをいつもより少し早めにこぎながらどうでもいい話を学校まで続けた。

この時間が私にとっては至福の時間。
創平くんにとってはなんでもない朝の1シーンなのかもしれないけど。
そう思うとなんかさみしいなあ。

「…ぎ!柊!危ない!」
「ほへっ」
「あっぶねえ。信号赤だぞ」
「ああ、本当だ。見てなかった」
「俺がいなかったらつっこんでたな」

ふわっと彼は微笑んだ。

その優しい微笑みに私はなんども心を奪われたんだ。
これはきっと神様のいたずらに決まってる。
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