I think of you.
「奈央、行くぞ」
お兄ちゃんの声がしたと思ったら、次の瞬間あたしの体がフワッと持ち上がった。
お兄ちゃんにお姫様抱っこをされていた。
「おい、千晴」
「はい?」
「その女のことが好きなら俺の妹に思わせぶりな態度とるな」
「…はい、すいませんでした」
素直に謝ってる千晴。
てことは… ボランティアか何かだったの?
そう思っちゃいけない。
そんなことはわかってる。
けど…… あたしと仲良くしてくれてたのは、直さんと名前が同じだから?
男の子に相手にしてもらえなくてかわいそうだったから?
どんどん悪いほうに考えてしまう。
「奈央、泣くなよ」
気がついたら、あたしはお兄ちゃんの胸に顔をうずめて泣いていた。
ほとんど無意識だった。
千晴と直さんがいるのに泣くなんて…
「ごめ… ごめんなさい」
必死に謝るあたしを見かねたお兄ちゃんは、お姫様抱っこをしたまま千晴と直さんを睨みつけて歩き出した。