続・絶対温度-私の定義-
***

「で、高見ちゃんは何で今日もそんなに仏頂面なわけ?」


喧嘩中?それとも欲求不満?と爽やかに笑顔を作りながら、サラリと毒づくのは、



「この顔は元からです。そして、余計なお世話です」

「ん、相変わらずだねー」


数ミリも失礼さが変わらない山都さん。取引先の部長である彼は相変わらずパーフェクトな微笑を張り付ける。色素の薄い髪、優しげな眼鏡、上品で知的な顔立ち。第一印象で騙される事この上なしな容貌。


グラスを持つ指先がスラリと長いのが腹立つ。


今日はイベントが終わってその打ち上げ。帰ろうとしたあたしを無理矢理引っ張ってきたのはこの男で、小規模の居酒屋は小さな声なんて掻き消されそうな位盛り上がっている。


この雰囲気が苦手。お酒は黙々と呑みたい。話す相手かいるのは良いけど必要最低限で構わない。


だから、そんなあたしと肩を並べた所で面白くもないだろうに。


実際、山都さんと飲みたそうにしている何人かの女子社員はチラチラとこちらの様子を気にしている。



「面倒くさいからね?高見ちゃんが横にいると良い壁になるよ」



ニコリと笑う優しい笑顔。それに反した毒の吐き方。みんな騙されるな、と叫んでやりたい。



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