ピンクの星
学校に着くと、私たちは別れた。
私は一階の三年生の教室へ、隼人は二階の二年生の教室へ向かった。

教室にはまだ2、3人生徒がいるだけだった。
私と隼人はいつも、みんなが登校する時間帯よりもだいぶ早い時間を狙って登校した。
人が多い時間に二人で登校しているところを見られてとやかく言われるのが嫌だった。

この時間なら、部活の朝練をやり終えて、朝からがっつり疲れて机にうつぶしてるやつか、朝早くから自主的に勉強しているがり勉くんしかいない。
みなそれぞれ他人に干渉してこない。

私はこの時間が一番落ち着いた。
窓際の一番後ろという特等席の自分の席に着くと、ふと外に目がいく。

桜が満開で、花びらが教室の中にも入りこんできていた。

(隼人も見てるかな)

ふと上を見上げると、伸びた桜の枝が、二階の窓に届きそうになっていた。

あれだったら、窓から手を伸ばせばきっと触れるなっと思った瞬間、ほんとに二階の窓から手が伸びてきた。

口をあけて、ぽかんて上を見上げていた私は、窓から身を乗り出して、その手の主を呼んだ。

「隼人っ」

突然思いもしないところから名前を呼ばれて、驚いたようだった隼人は、それが私だと分かると笑顔になって、伸ばした手で桜の枝をはらった。

隼人の掌から、まるで花びらがこぼれ落ちるように、ハラハラとたくさんの花びらが私のもとへと舞散ってくる。

何してんの
と、口をパクパクさせる私を隼人は楽しそうに見下ろして、手を振った。

偶然にも隼人は、階は違えど同じ三組の窓際の席だったようだ。

高部隼人と
東海春菜

二人が同じクラスだった時は、出席番号順でいくとかならず前後の席だった。
家も隣で、席まで近くなくていいだろうと、担任の先生にもクラスメイトにも笑われた。

思春期まっさかりの中学時代は、それが照れくさくて恥ずかしくてしょうがなかった。

だから私はしばらく隼人を避けていた時期があった。
他人の目を気にするくせは、今でもまだ残っているが、その時は特にひどかった気がする。

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