monochrome
焼き肉を腹一杯になるまで食べた俺たちは、焼き肉屋をでて帰宅した。
宇都宮と途中で別れ、俺と千鶴で家路へ向かう。
宇都宮がいなくなると、俺たちは途端に口数が減った。
白い息だけが吐かれるしばしの沈黙。
嫌気がさしたのか、話を振ったのは千鶴だった。
「………良かったね。受かって」
「お、おう…」
「玲二頑張ったよ」
「お、おう…」
「…………何か言ったら?」
「お………。お前も受かって良かったな」
「当然。ハードル下げたんだし、受からないといたたまれない」
千鶴は親に散々、文句を言われていたらしい。
その分受かっていないと、今までしてきたことが無駄になるということだ。
「そっか。……また、よろしくな」
「こちらこそ」
顔を合わせはしない言葉のキャッチボール。
だけどお互いどんな顔をしているのかだいたい分かっていた。
今年も、千鶴が隣にいる。
俺は自分より背の低い千鶴を眺めていた。