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唐突な勧誘にあたしはまばたきを忘れる。
西校は玲二の第一志望だった。
「な、何で?」
別に正当な理由など求めてはいなかった。
「何でって……隣町だから家から近いし、俺いるし」
あたしは前者の理由よりも後者の理由の方が気になった。
「玲二が…いるし?」
「おう。北校って偏差値65とかだろ?勉強ばっかしてると頭バカになるぞ」
なんだか前者を誤魔化そうとしているような気がした。
あたしは小さく笑い、バッグの中に手を入れた。
昨夜、遠出した目的のものを取り出した。
それを玲二に差し出す。
「?俺に?」
「帰りに道間違えて大変だったんだからね。受からないと承知しないって呪いかけといたから」
玲二に差し出したもの、それは合格祈願の御守りだった。
玲二はあたしと御守りを目を丸くしながら交互に見た。
しかしすぐに笑顔を見せて
「さんきゅう」
そう言った。
あたしは、西校に進学すると決めたんだ。