この声が君に届くとき
――7年前
桜が舞い散るこの季節、僕はまだ着なれないブレザーに身を包み、未だかつて経験したことのない緊張に襲われていた。
「美桜。」
「ん?何?」
美桜はこちらを見て首を傾げた。
「……俺…、めっちゃ緊張して来た…。」
僕はそう言うと、震えの止まない両手を必死でおさえた。
その姿を見ていたのか、美桜は「大丈夫。」と一言呟いた後に、僕の震えた両手を柔かく包みこんだ。
「大丈夫、絶対大丈夫。雄治なら、きっとうまくやれるから。」
そう言って美桜は、天使のように優しい顔をして僕に笑ってみせた。
僕は一体、何度この笑顔に助けられたのだろう。