彼女には言えない。
―――シュッ…シュッ…
丸つけの音だけが響く。
静かに時間は流れ、
竜希はただ、ボーッと俺を見ていた。
俺はそんな視線を感じつつ、手を進めていく。
「……なあ、秋人」
突然、口を開いたのは竜希だった。
俺は丸をつけながら竜希の方を見ずに短く返事をする。
「ん、何?」
「俺らさあ…」
それはとても哀しそうな声で、俺は竜希の方に目をやる。
「なんだよ」
「もうすぐ卒業なのな…」
初めてだった。
こんな顔の竜希を見るのは。
初めてだった。
竜希の作り笑いを見るのは……