彼女には言えない。
*恋のはじまり
それは今から2年以上前のこと。
新しい制服を着て
新しい教科書を開き
満開の桜の下を歩き実感する。
「高校生か..」
そして、右手でクイッとかけていたメガネをあげる。
「勉強、勉強」
そう言って開いていた教科書のページを捲った。
"地味"で"運動音痴"
それは正しく僕のことだろうと自覚している可哀想な男、
猶井 秋人[ナオイ シュント]
3日前から高校1年生。
自分には勉強以外なにもない。
せめて、いい大学に入って
立派な大人にならなければならない。
だから、友達も僕みたいな冴えない奴を適当に捕まえて適当にやり過ごせばいい。
そう思っていたのに……
「しゅーんっ!おはっ!」