彼女には言えない。
*恋を伝えたい






家に着くのと同時に
携帯が鳴った。



着信だった。
……相手は薫。




「もしもし」


「もしもし?今、平気?」






また、薫の名前が
着信履歴に残るのか。


本当は嬉しいのに
素直に喜べなくて、
本当は苦しいのに
もがき方すら分からない。



「うん、平気。どした?」




分かってる。
薫の話には竜希しか
出てこない。



のろけか、想い出話。
あとは、悩みか頼みごと。



全部、全部竜希なんだ。


それでも、薫が俺を頼ってくれているなら、それでもいいと思ってしまう。





"好き"の気持ちは
心の隠し扉にしまっておいて。



「あのねっ!竜希がね……」




伝えることすら許されないなら隠し扉の存在すら忘れよう。




「でさ〜、秋人も来ない?」


「……ん?」



突然、我に返った俺は
薫の話が右から左へ
抜けていて、
内容がよく分からない。






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