彼女には言えない。
「話聞いてたあ?」
と、携帯の向こうから呆れた声がする。
「……わりっ、Myworldにタイムスリップ中だった」
「最悪」
そう言って薫のため息が携帯から聞こえた。
「無事、帰還して来ました」
「おかえりなさい」
と、薫が俺のボケにノってくれたのだった。
「で、秋人がタイムスリップ中にあたしがバカみたいにべらべら一人で喋ってた話の内容なんだけど」
「…はい」
薫のしゃべり方が悪質過ぎて身震いする俺はなんて情けない野郎なんだろう。
自分のヘタレさに悲しくなっていると、
「こないだ、竜希から遊園地のお誘いきたんだけど、秋人も行かない?」
薫はあり得ないことを口にした。