彼女には言えない。
俺はびしょびしょのまま泣き続ける薫にタオルをかけて手を引く。
そして、薫が家に入ろうと
一歩踏み出した時、
―――ゴロロロッ
「キャッ!」
突然、雷が光る。
それに驚いた薫が…
俺に抱き付いてきた。
「薫…大丈夫だ。雷落ちた所遠そうだし」
本当はすごくドキドキしてんだ。
でも、気持ちがバレないように
普通に振る舞う。
「…あ、うん…ぐす、ゴメン」
そう言って、
薫が体を離れる。
そして、俺は再び
薫の手を引いて家に入れた。
「ん、ありがと…」
薫がこんなに弱った姿を見たのは初めてだった。
儚くて、綺麗で。
俺はタオルを奪い、
ずっと泣いている薫を拭いた。
「ずっと泣いててもわかんねぇよ。ほら、いつもみたいに話してみろよ」
「…うん」
鼻を啜りながら小さく返事をした。
「いつも…ありがと、聞いてくれて」
「おう」
そう言って、拭いていた俺の手を薫は自分の右手で止めた。