彼女には言えない。
そう言って、薫は玄関のほうに向かった。
このまま帰していいのか?
自分に問いかけてみる。
じゃあ俺に何をしろっていうんだよ。
まるで俺の中に悪魔と天使がいるようで、頭はぐるぐるとフル回転している。
「…薫っ!」
玄関のドアを開け、
今にも「お邪魔しましたー」と帰ってしまいそうな薫を引き止める。
本当は今にも、
告白してしまいそうな雰囲気をかもしだしていたが、気持ちを抑えた。
「……送るよ!」
脳ミソ動かして出た言葉がこれだ。
なにか気のきいた言葉の一つや二つ言ってやりたいが、それにはもう少し時間が欲しかった。
俺は急いで靴を履くがそれを薫が止める。