彼女には言えない。
全く関係ない俺が
こんなに手汗をかく意味がわからん。
でも、竜希は全身から汗を吹き出していた。
おいおい、今そんな暑い季節じゃねーよ。
と、心の中で自分と竜希にツッコミをいれる。
「ねぇ竜希」
薫は依然と表情を変えずにいた。
「なんだよ」
竜希も強張った表情は変わらない。
重い空気が流れ、
関係ない俺が押し潰されそうだ。
「…少し距離置こっか」
薫の発言に、竜希の体がピクリと動く。
「な、なんで!」
大声で叫ぶように竜希が言った。
俺も驚いた。
今まで二人の喧嘩を見てきたけど、ここまで薫が言ってるところは初めてだ。
でも、確かに泣いていた。
昨日薫は確かに泣いていたんだ。
泣いていたんだ。