彼女には言えない。
俺は薫のこと好きだから
やっぱりこんなの見てみぬフリなんか出来ねぇし、
それと同じくらい
竜希のことも大切なんだ。
だから、お節介かもしれないけど、ほっとけない。
「とりあえず座れよ」
そう言って俺は
屋上の一番端に腰を降ろす。
―――キーンコーンカーンコーン……
授業開始のチャイムが鳴った。
「いいのかよ、サボって。ガリ勉野郎が」
そう言って竜希は
俺の隣に座る。
「今日は特別だ」
そう言うと、竜希はハッと笑って空を見る。
「俺……本当はめっちゃ惚れてんだ」
竜希は空に話し掛けるように呟く。
「本当、薫がいないなんて想像出来ねぇくれぇ惚れ込んでんだよ…」
そう言うと
竜希の目尻から涙が流れた。
「ちきしょお…」
竜希は制服の袖で
涙を拭いて歯をくいしばる。