彼女には言えない。
羨ましい。
この気持ちはきっと、
薫を想い続ける限り
消えることのない
醜い嫉妬なんだろう。
「彼氏には言えない話代わりに聞いていただけだ。お前に言えなかったのはお前が彼氏の証だろ」
「薫はさ……」
竜希が静かに
口を開く。
「どんな感じで秋に話してたんだ?"別れたい"なんて漏らしてたりしたか?」
薫はいつも竜希のことばかり。
「薫はなんだかんだでいつも嬉しそうに話してたよ。薫はお前が思っている以上にお前のことが好きなんだ」
薫はお前しか見えてないさ。
「今回の喧嘩だって、きっと。ちゃんと竜希が自分の気持ちを伝えれば解決するだろ。冷静にはっきりと素直に」
そう言うと、竜希は立ち上がった。
「ありがとう…本当お前、いい奴だ」
そして、竜希が屋上を出ていく。
それとほぼ同時に
授業終わりのチャイムが鳴り、
ほぼ同時に、
俺の瞳から涙が伝う。
「何やってんだろ…俺」