彼女には言えない。




「どうかなさいましたか?」


横から店の店員さんが不思議そうに声をかけてきた。



「…すいません」



俺は静かに立ち上がり
急いで店を出る。




「…くそ…くそっ!」




拭いても拭いても
涙が出てきて、
イラついて近くの
電柱を殴る。


周りの目なんて気にしない。
拳に滲む血と痛みも気にしない…




まだ耳に残っている
あの曲は気にしないというわけにはいかないようだ。



「…ちくしょお……」




まるで『あきらめろ』
なんて言われたようだった。




もう一人の俺に
忘れるよう説得でも
されてる気分だった。







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