彼女には言えない。
俺は笑いながら
竜希の肩を叩いた。
「そんな熱くなんなって!俺は別に片想いのままでいんだよ」
……片想いのままでいい?
竜希はゆっくりと
俺のネクタイから手を離す。
「今の言葉、本気か?」
「…あぁ、片想いのままで構わない」
そんなの嘘だ。
ちゃんと告白して
「いいよ」って薫に笑ってほしい。
初めてのデートでは
照れ臭そうに手を繋いで。
夜になったら、そっと
唇にキスをしてあげる。
毎日笑って、時々喧嘩して
でも、すぐ仲直りして…
そんなことをずっと
夢見てきたんだ。
「秋…」
気がつけば、
俺の視界が涙でぼやけていた。
「やべぇ…何泣いてんだ、俺」