彼女には言えない。
俺の叫び声は
風となって消えてしまった。
竜希はニッと口元を上げて笑顔を作る。
「やれば出来んじゃねぇか」
竜希のその笑顔が
まぶしいくらいに
優しくて。
でも、それは
バックに夕陽があるから
かもしれないと思いながらも、
竜希の笑顔は再び
俺の涙を誘う。
「な?すっきりしたろ?」
ボロボロと涙を流す俺を
わざと見ないようにして
竜希はそう言った。
「…あぁ、そうだな」
この時、初めて気づいたんだ。