彼女には言えない。




周りも皆涙を流していた。

俺は机の上にある花束に手を伸ばす。




花束は先生の大好きな
赤色の花ばかりがくくられていた。





「赤は情熱の赤だ」



先生がそっと口を開く。



「これから言うことは、皆に贈る最後の言葉だと思え」




先生の瞳には
もう涙はなくて、


まっすぐ俺たち一人一人に話かけるように言う。



「自分の人生に後悔するようなことだけはするな。情熱的に生きろ。そして、燃えて、燃えて、燃え尽きたその時は…」







その言葉は、きっと、今の俺に必要な言葉だったと思う。








「沢山泣けばいい」






優しくて、暖かな先生の言葉をぎゅっと抱きしめるように俺は拳を握る。






なぁ、薫。




俺はずっと、君が好きで。


いつも君だけを想っていたんだ。



ヘタレだった俺を
地味で目立たなかった俺を
変えてくれたのは、


確かに君なんだよ。


君を好きになったから、
初めての恋を教えてくれたから、



今の俺がいるんだと思うんだ。






< 79 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop