彼女には言えない。
周りも皆涙を流していた。
俺は机の上にある花束に手を伸ばす。
花束は先生の大好きな
赤色の花ばかりがくくられていた。
「赤は情熱の赤だ」
先生がそっと口を開く。
「これから言うことは、皆に贈る最後の言葉だと思え」
先生の瞳には
もう涙はなくて、
まっすぐ俺たち一人一人に話かけるように言う。
「自分の人生に後悔するようなことだけはするな。情熱的に生きろ。そして、燃えて、燃えて、燃え尽きたその時は…」
その言葉は、きっと、今の俺に必要な言葉だったと思う。
「沢山泣けばいい」
優しくて、暖かな先生の言葉をぎゅっと抱きしめるように俺は拳を握る。
なぁ、薫。
俺はずっと、君が好きで。
いつも君だけを想っていたんだ。
ヘタレだった俺を
地味で目立たなかった俺を
変えてくれたのは、
確かに君なんだよ。
君を好きになったから、
初めての恋を教えてくれたから、
今の俺がいるんだと思うんだ。