彼女には言えない。





「…ちょっと、今時間あるか?」



薫は不思議そうな顔で俺を見た後、チラリと振り返り教室を見渡す。



すると、近くに座っている奴に声をかける。



「ねぇねぇ、あたしの机の上に卒アルあるからみんなに『コメント一言は書け』って言ってくれる?強制ってね」



そして、薫は俺の腕を掴む。



「少しなら時間あるっ!図書室行こ、今ならきっと誰もいないよ」



そう言って笑うから、
俺も自然と笑顔になれた。



薫はいつもこうして
自由に連れ回す。


腕を捕まれれば、
振り払えないし。

笑いかけられれば、
嫌とは言えない。



俺は薫の自由さに
振り回されるのは
嫌いじゃない。



むしろ、その逆。




薫の自由な波に
流されるのが心地良かったんだ。







< 81 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop