彼女には言えない。
図書室のドアに
手をかける。
「おっじゃまっしまーす!」
元気良くドアを開け
ズカズカと中に入る薫。
その後ろを追って
俺は図書室に入る。
薫と二人きり…
なのに、何故か不思議と
緊張はしていない。
いつもなら
ドキドキしてまともに
薫の顔なんて見れないのに…
なんでだろう。
ただ、君が愛しくて。
その気持ちしか俺の中にはないんだろう。
恥ずかしいとか、
自分だけを見てほしいとか、
嫉妬とか、
そんな気持ちはきっと
今、俺の中にはないんだろう。
「…薫」
「ん?」
長い髪をなびかせながら
振り返る薫が、とても美しくて。
俺はそっと笑って見せた。