彼女には言えない。






図書室のドアに
手をかける。



「おっじゃまっしまーす!」



元気良くドアを開け
ズカズカと中に入る薫。



その後ろを追って
俺は図書室に入る。




薫と二人きり…


なのに、何故か不思議と
緊張はしていない。


いつもなら
ドキドキしてまともに
薫の顔なんて見れないのに…



なんでだろう。


ただ、君が愛しくて。


その気持ちしか俺の中にはないんだろう。




恥ずかしいとか、
自分だけを見てほしいとか、
嫉妬とか、

そんな気持ちはきっと
今、俺の中にはないんだろう。





「…薫」



「ん?」




長い髪をなびかせながら
振り返る薫が、とても美しくて。






俺はそっと笑って見せた。






< 82 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop