彼女には言えない。
ボロボロと
涙を流す俺の横で
薫が席を立つ。
「あたしはそろそろ行くよ。あたしが居ると思う存分泣けないでしょ?」
そう言って
薫は俺に背を向ける。
薫は気づいてたのか。
泣き顔を見られたくなくて
わざと顔の前に手を置いていたこと。
「…ありがとう」
すると、フッと薫が
笑う声がして
俺は顔を上げた。
そこには
3年間想いつづけた
彼女の後ろ姿があって、
少し、見とれてしまう。
「あたし、覚えておいてあげる」
薫がそう言って
笑顔で振り返る。
「ちゃんと秋人が真剣に誰かを想ってたこと。あたしが覚えておいてあげるから。秋人が自分の気持ち伝えられなかったとしても、その人の代わりにあたしが覚えておいてあげるっ!」
その時、見せてくれた
薫の笑顔は、
今までで一番儚くて。
今までで一番綺麗で。
今までで一番……
君らしく見えた。