彼女には言えない。
「おう…頼んだ」
俺の返事を聞くと、
どこか安心したかのように
くるりと回り、
俺に背を向け歩き出す。
一歩ずつ距離が出来る。
図書室のドアに
薫が手を伸ばした時。
「…薫」
君に聞こえないくらい
小さな声で呼んだのは、
君は届いてはいないだろうな。
「薫が好きなんだ」
俺の言葉と共に
薫は図書室から出る。
そして、ピシッと
ドアが閉まる音がした。
それは、きっと。
この恋が終わる音。