彼女には言えない。
「お前まで泣くなよ」
その言葉で自分の涙に気づく。
そして、また笑い合った。
小さなことでも笑えるんだ、お前となら。
小さな光が強さになるんだ、お前となら。
短い時間が思い出になるんだ、お前となら。
ありがとう。
ただ、それしか
言えないけど。
ただ、それだけなんだ。
「ありがとな、竜希」
僕の言葉にまた
瞳を潤ませる。
「……バカ野郎」
そう言って竜希は
顔を隠すように僕に背を向けた。