彼女には言えない。







肩を震わせながら
泣いている竜希の肩を
ポンと叩き、




「またな」




と、言って竜希の横を
通りすぎる。







「……秋、こっちこそいろいろ…ありがとな……グス」



竜希の言葉を僕は背中で受ける。




「薫と別れんなよ」


そんな強がりな言葉さえ
吐けるほど、僕は強くないけれど、心から願うよ。



二人の幸せを。





だから、もう少し
僕の涙を許してくれ。



そして、僕は
一度も振り返らず
図書室を後にした。









< 95 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop