彼女には言えない。
肩を震わせながら
泣いている竜希の肩を
ポンと叩き、
「またな」
と、言って竜希の横を
通りすぎる。
「……秋、こっちこそいろいろ…ありがとな……グス」
竜希の言葉を僕は背中で受ける。
「薫と別れんなよ」
そんな強がりな言葉さえ
吐けるほど、僕は強くないけれど、心から願うよ。
二人の幸せを。
だから、もう少し
僕の涙を許してくれ。
そして、僕は
一度も振り返らず
図書室を後にした。