桜、咲く頃会いましょう。

とりあえずその場は適当にお茶を濁して解散となった


桜子にはできるだけ知らせたくない


だけどあいつは周りの機微に聡いから感じ取ってしまうかもしれない


それでもあいつが気づくまではこの事について黙っていたいと思うのはやっぱり俺のエゴなんだ



部屋に戻ると桜子はすでに寝る準備を終えていた


「今日もお疲れさまです。私は明日も
いので今日は先に休ませてもらいますね?」

「あぁおやすみ」


短く言葉を交わしたあと桜子はすぐに布団に潜った



俺も仕事終わらせちまわねえとな



桜子が寝入ってから一刻ほどたった頃

部屋の明かりを消して布団に入った


「ごめんな、桜子」


何がどう転んだって桜子を傷つけてしまうのは明白だ


お前を守りたいって気持ちは誰よりあるはずなのに、俺が一番お前を傷つけてしまう立場にいるのかもな


「何を謝ってるんですか?」

「おまっ起きて…」

「すいません、なんだか眠れなくて」



驚いて起き上がると桜子も隣でむくりと体を起こした


ふすまの隙間から微かに月の光が差し込んでいた



< 334 / 336 >

この作品をシェア

pagetop