【短編】ダメ男依存症候群
翌朝、奈津美はホテルのベッドの上で目を覚まし、見慣れない天井に、裸の自分、その隣に眠る裸の男を見て混乱した。
そしてすぐにその男も目を覚まし、
「ナツミさん、起きた?」
体を起こしながら言った。なぜか旬は奈津美の名前を知っていた。
「何で名前知ってるの…? ていうか、誰?」
奈津美が必死にシーツで裸の体の前を隠しながらそう聞くと、
「ナツミさんから聞いてきたのに~? もしかして俺の名前覚えてないの?」
残念そうな顔をした旬に奈津美は黙って頷いた。
「…ていうか、私達……やっちゃったの?」
この、ベッドにそれらしき痕跡も残っている明らかな状況で、奈津美はそう聞いた。
「うん」
旬は、嬉しそうに頷いていた。
「すっげー良かったよ。ナツミさん、めちゃくちゃスタイルいいし、感度最高だし。不感性とか言った男、バカたなぁ」
それを聞いて、顔が熱くなった。
そして、昨夜、酔って乱れて、居酒屋の店員に散々愚痴って、最終的にホテルに誘われたことを、今更になってやっと思い出した。
「ナツミさんも気持ち良さそうだったし、やっぱ下手だったんだよ。元彼と別れて正解じゃん」
「ご……ごめんなさい!」
意味もなく、奈津美は謝った。辺りを見回して、自分の服を探した。
「なんか酔って迷惑かけちゃって……」
ベッドの下の方に、バスローブを見付け、とりあえずそれを掴んで羽織った。
「り、料金は払うから……本当にごめんなさい!」
そう言ってベッドから下りようとした。
「待って」
奈津美の手首を、旬が掴んで引き止めた。
「え……?」
奈津美はただ意味が分からず、混乱した。
「ナツミさん。俺と付き合って」
旬からの告白は、とても突然だった。
「えっ?」
奈津美は驚いた。目を見開いて旬を見ると、とても真剣な顔をしていた。
「順番逆になったけど…でもそのおかげで惚れたっていうか。だから俺と付き合って」
とても熱烈的な告白だった。しかし、奈津美はやっぱり困惑して、固まってしまった。