【短編】ダメ男依存症候群
「で? 十四日はお泊まりなの?」
カオルはにんまりと笑い、興味の方向を変える。
「泊まらないから。平日だから、会って渡すだけ」
奈津美はそう言ってクールに返す。
「えー。つまんない」
「つまんないって…あたしは娯楽?」
唇を尖らすカオルに、奈津美は呆れたように返した。
「だっておもしろいから。彼氏君の話」
おもしろいと言われても、あまり誉められたような心地がしない。
「ていうか、そういうカオルこそどうなの? 十四日、会ってお泊まりしないの?」
いつも人のことは聞くくせに、自分のことは言わないカオルに、今日は奈津美が突っ込んでみる。
「だってあたしは会わないもん。十四日に」
カオルからはあっさりそう返ってきた。
「彼、十四日に急な出張入っちゃったから、その日は会えないの。ま、代わりに週末はそれなりに楽しむけどね」
ふふっとカオルは何か含みのある笑い方をする。
それは、大人の時間を楽しむ、という意味らしい。
「あ~あ。本当、いいなぁ」
奈津美は溜め息をついて、再度そう言った。
実は、奈津美の元カレとカオルの彼氏との出会いは、同じだったりする。
一年半ほど前、カオルの知り合いか何かのツテで、その二人が勤めている会社の男前男性社員との合コンに行って知り合った。
向こうも二人が友人同士らしく、始めは四人で話していたのだが、暫くして、片方(カオルの今の彼氏)がカオルのことを気に入り、カオルもまんざらじゃないという感じで仲良く話しだした。
仕方なく、奈津美はもう片方(奈津美の元彼)と話していて、まあ何とか打ち解けてきた頃、カオル達は付き合うことになっていて、じゃあ俺らも付き合おうか、と言われて奈津美達も付き合い始めた。
そして、奈津美らは一年前に別れたがカオル達はまだ順調に続いている。
この差は一体なんだろうか。その場の雰囲気で付き合い始めたせいだろうか。貧乏くじを引かされてしまった気分だ。