【短編】ダメ男依存症候群
「でも奈津美、何だかんだ言いながら長いこと付き合ってるじゃない。それはやっぱり奈津美も彼氏君のことが好きだからでしょ?」
「まあ……そうなのかな」
そう言えば、前の彼氏は、一応奈津美の理想通りだった。年上だったし、落ち着いた雰囲気だったし、別れの発端となったことがあった以外は基本的に誠実だったし……少なくとも、奢る奢らないで言い争うようなことは一度も無かった。…なのに付き合ったのは半年も経たないぐらいだった。
旬とは……何だかんだで一年続いている。実はこれは、今までの奈津美の恋愛遍歴の中で、一番長い。
これには、奈津美自身驚いている。そして疑問だ。
「奈津美。理想と現実は違うわよ。理想の人間が自分に合う人間かは違うからね」
カオルが、諭すようにそんなことを言った。
ということは、旬は自分に合う人間だということか……こんなに文句がでるのに。
不思議な話だ。
「そういやシュンってさー――」
不意に耳に入った言葉に、奈津美はピクリと反応して、隣を向いた。
「どうしたの?」
奈津美の動きに、カオルが尋ねた。
「あ…ううん。なんか旬の名前が聞こえた気がして……」
奈津美がそう答えると、カオルがいつものようににんまりと笑った。
「へぇー。自分の彼氏のことだったら耳聡いわねぇ」
「そっそんなわけじゃないわよっ。それに多分、聞き間違いだしっ!」
奈津美は慌てて否定した。
本当に、思わず反応してしまったことが恥ずかしい。『シュン』なんて別に珍しい名前ではないのに……