【短編】ダメ男依存症候群
「何でって……そこにナツがいるから?」
「………」
何か聞いたことのあるフレーズのようになって返ってきて、奈津美はそれに対する言葉を失う。
「何か違う?」
「うん」
何かというか、全く違う。
「え~……つうか、何でいきなり?」
旬に痛いところを突かれてしまった。
「別に…今思ったから、何となく……だって普通引くでしょ? 酔っ払いの女とか。ていうか、旬がホテルに誘ったのって下心?」
自分でも珍しいほどに奈津美は早口で口数多く喋っていた。
焦るとこうなるんだ、と、自分で初めて知った。
「ん~……まぁ、ぶっちゃけ?」
素直にあっさりと旬は肯定した。
「だって、目の前でオッパイのおっきいお姉さんが『帰りたくない』っていうもんだからさ?それでちょっと、まぁ……うん」
流石にちょっとばつが悪そうに、旬は言っている。
それは、確かにあの時は奈津美の方がそうなってもしょうがない状況を作ったのだから仕方ない。
「でもさ、俺、それがナツでよかったと思ってんだ」
「え………」
旬のその言葉の意味が分からず、奈津美は返す言葉に迷う。
「ナツのこと、知れば知るほど好きになるから。こういうの、ナツが初めてなんだ」
旬はそう続けた。
「……そんな恥ずかしいこと言わないで」
本当は嬉しいのに、顔だって赤くなっているのに、旬のように素直な言葉にすることができない。奈津美は、何だか少しクールな口調になってしまう。
「うん。自分で言ってちょっと恥ずかった」
そう言って旬は笑った。
旬に会いたい。
こんな風に話していたら、急激にそう思った。