【短編】ダメ男依存症候群

 奈津美は、携帯を取り出した。

 今日はずっと落としていた電源を、やっといれる。


 操作をし、受信ボックスを開いた。旬からの未読のメールが……数えてみると二十件になっていた。


 奈津美は、それを古いものから、順番に開いていく。


 まず最初は、二月十四日十七時五十八分。奈津美が旬を追い返した後だ。


『今日は本当にごめん!
俺、ナツのことちゃんと考えてなかった。ナツが怒るの当たり前だよな。
本当にごめん!』


 とにかく謝っているようだ。あの場の流れでは、とりあえずそうするしか思い浮かばなかったのだろう。


 そして、次が深夜一時過ぎ。


『ナツ
ちゃんと謝るから、電話したい。いつでもいいから、電話下さい』


 奈津美は次々とメールを開いていった。


『ナツ
メールだけでいいから、返事欲しい。
いつでもいいから。俺待ってるよ』


『ナツ…本当にごめん。
許してくれなくてもいいから、話したい』


 その後も似たようなメールの内容だった。


『ごめん』

『ちゃんと謝りたい』

『話したい』

『連絡ほしい』


 そんな内容が繰り返されていた。

 奈津美に対して、責めたり怒ったり、そんな言葉は一切使わずに……


 あんなに自分勝手なことばかりして、ひどいことを言ったというのに……


 そうだ……

 旬は、そんなこと言ったり、ひどいことはしない。


 そんなこと、分かってたはずなのに……


『流石に嫌気さしたと思うんだよね』


 どうしてあんな風に言えたんだろう。


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