【短編】ダメ男依存症候群
あれ以来、奈津美は今までと大して変わらず旬に接していた。
旬がありのままの自分を受け入れて、それを好きだと言ってくれるのなら、特に意識せず、自然体で振る舞おうと決めたのだ。
それにしても、部屋の中の有り様は本当に酷い。
どうしてこうまでなっているのかと、よくよく見てみると、いつもは散らかっている部屋には存在しない、大判のゴミ袋が点々とそこらにある。
それらは全部、中途半端にゴミを入れて放置してある。
「旬、何でこんなに袋を無駄使いしてるのよ。まだ入るのに勿体無いでしょ」
台所から戻ってきた旬に、奈津美は注意する。
「別に無駄使いしてるわけじゃないよ。分別してんの」
意外にも、旬は平然と言い返してきた。
「ナツ、いつもゴミはちゃんと分別してって言うじゃん。だから分けてたの」
あの旬がそこまで考えてやっていたなんて驚いた。
「でも分別してたら途中でややこしくなってそんな状態に」
さらりと挫折したことも言ってしまった。旬らしい。
旬らしくて、呆れる。
「もう……そんな言うほどややこしくはないでしょ。燃えるのと燃えないのと、空き缶、ペットボトルぐらいなんだから」
そう言いながら、奈津美はそこらに落ちているゴミ袋を拾い上げ、中身を見てみる。
「もー……早速空き缶とペットボトルが同じところに入ってる」
奈津美はペットボトルを取り出した。
「え~。マジで?」
そんな風に言いながら、二人で掃除を始めた。