彼女は今日も失恋する
隣を見れば、すやすやと安らかな寝息を立てる百花がいて。
「……子供んときと、同じだ。」
その無邪気な寝顔に思わず笑みがこぼれた。
それと同時に、後悔とも罪悪感とも…何とも言えない感情に支配される。
“また”やってしまった。
もう何度も。
俺たちは、こういうことを繰り返している。
失恋した百花が俺のところにやって来て、
ヤケになって飲みまくった挙げ句、勢いに任せて身体を重ねる。
そして、
次の日には、何事もなかったかのように元の関係に戻る。
“キョウダイ”と言う、百花にとって、何とも都合のよい関係、に。
……もうとっくに、そんなの“無効”なのに。
過去の恋を吹っ切って、新しい恋に向かって歩き出す百花。
それとは対照的に、
前に進むはずが、過去に連れ戻される俺。
16歳の冬。
初めて“キョウダイ”以上の関係を持ったあの日以来、
百花が失恋する時期と、
俺の恋が始まる時期とは
皮肉なことに、
見事に一致しているから―――