彼女は今日も失恋する
「失恋した」
なんて、言ってて自分で笑っちゃうよ。
すべてフィクション。
架空のお話。
沙織とかママとか、他の友達の話とか…うまーくミックスして脚色して、アカデミー女優にでもなったつもりで演じきる。
そうすると、千歳の中では“リアル”になる。
信じちゃう、んだよね。
……で、
同情からか哀れみからか、私を“慰めて”くれる。
そして“彼女”と別れてくれる。
私にとっては、まさに“魔法の言葉”。
狡くても、最低でもいい。
誰になんと言われようが、かまわない。
千歳が私のものになるなら、それでいいの―――
……あ。でも、ほら。
考えようによっては、嘘とは言い切れない部分もなきにしもあらず…だよね?
だって、私がその言葉を口にするのは、千歳に“彼女”ができたときなんだから。
一瞬でも、やっぱり“失恋”してるんだから。
「……ねぇ、ちーちゃん?」