彼女は今日も失恋する


「今夜はこの冬一番の冷え込みなんだって。もしかしたら、ホワイトクリスマスになるかもしれないよ?」


千歳を抱きしめたまま、私はぼんやり呟いた。


「そしたらさ、イルミネーションはやめて、そこから雪を見ながらケーキ食べよう?」


ベランダのほうに視線を送りつつ、そこにツリーがほしいなぁ…なんてふと思う。

今さらだけど、買いに行こうか?

なんたって、年に一度のイベントだもんね。

もっと積極的に参加してもいいのかもしれない。





せっかく…“好きな人”と過ごせるんだから。





「それから…って聞いてる?」


千歳は何も言わない。

また寝ちゃった?

まぁ、いっか。


「1人じゃ寒くて眠れないから、寝るときはこうやってぎゅっとしてね」


あ。サンタクロースが来るのって、今夜だっけ?

小さい頃は、起きて待ってたっけ。

今はもう、お願いするプレゼントなんてないけどね。


だって、

欲しいものは、腕の中にあるんだもん。






でも、強いて言うなら……




「失恋した」


その言葉なしに、


こうやって隣にいられるように……




少しの勇気が欲しい、かな。











*End*



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