彼女は今日も失恋する


「で、今度はどんな“いい”男だったわけ?」


うんざりしつつも百花を見れば、俺が差し出したグラスを横によけて、とっくに空になった缶を1つずつ確認している。

……ったく。

まだ飲む気かよ。


「……え?何か言った?」


案の定、人の話は聞いちゃいない。


「だから、フラれた男。どんな奴だったわけ?」


別に知りたくもないけど。


「フラれたんじゃなくて、私が“フッた”の。」

「あ、つき合ってたんだ?俺はまた、てっきりお前の片想いだとばかり…」

「失礼ねっ。私はこれでもモテるんですぅ。“引く手も数多”で大変なんだからっ」


……そりゃ、矛盾してるだろ?

なら、こんなとこでぐじぐじしてないで、さっさと次の男のとこに行けよ。


「ちーちゃんにはわかんないよねぇ。恋愛の難しさも私の魅力も。」


えらそうに言ってるけど……

わかってないのは、お前のほうだよ。


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