彼女は今日も失恋する


百花は、いわゆる“恋多き女”ってやつで。

年がら年中、誰かに恋をしている。

「カッコイイ」とか「素敵」だとか、ミーハー心で騒いでいるだけの時もあれば、告白したりされたりで普通につき合う時もある。

“ひと夏の”とか“一夜限りの”とか…期間限定の恋なんてのもよくある事。


一体いくつの恋をして、何度それを失ったのか…本人ですらわからないと思う。


ここまで来るともう“趣味”とか“特技”だとしか言いようがないよ。


当然、恋をした数と失恋した数はイコールなわけで。

百花の恋した回数だけ、俺は被害を被ったことになる。


中学のときから、大学生になった今、まで。

ざっと見積もっても、軽く100回は越えるだろう。


熱しやすく、冷めやすい。

惚れっぽく、飽きっぽい。

男なら誰でもいいとしか思えない。


だったら……


そこに続く言葉を、俺は毎回必死で呑み込むんだ。



いくら“誰でも”よくたって、

百花は絶対に、俺にだけは恋をしない。



だって……


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