【短編】Christmas Present
公子さんは不満げに「友達作りなさいよ。」と言っていたが、拓都は鬱陶しそうに顔を歪めただけだった。



入院してから、あの親子の間になにか壁が出来たような気がする。



それは公子さんが少し無神経なところがあるのがひとつあるのだろうが、拓都も今まで以上に距離を置いたような気がする。



どこか食い違って見えた二人だったが、今まではそこそこやってきた。



なのに、今回は拓都が彼女を寄せ付けない。



余計なお世話なのかもしれないが、心配だった。



今、拓都に必要なのは、気心の知れた友達なんだろう。



…とはわかっていながらも、通ってしまう私。



まあ、嫌がる素振りを見せていないからいいか。



ジングルベル、ジングルベル、鈴が鳴る〜。



心の中で、口ずさむ。



もうクリスマスがくる度、十数年聞き続けてきたおかげで、完璧にリズムがとれる。



お菓子の入ったマイバッグを小刻みに揺らして歩きながら、私は病院に入った。



途端、冷たい風に晒されて凍ったように感覚のなかった頬がとけたように火照った。



エレベーターを待ちながら、片手でマフラーを外す。



チンと音がして、ドアが開いた。



四階のボタンを手探りで押す。



もう、場所は覚えた。



運良く乗り合わせた人は全員私より上の階を目指していて、ノンストップでエレベーターは上昇した。



お先に、と心の中で一言。



私は足取りも軽く、拓都のもとへ向かった。



ノックして入ると、同室の人たちが笑顔を向けてくれた。



私も返す。



もう、拓都よりも私のほうが彼らと親しい。



きっと拓都にはそれも面白くない材料だろう。




< 18 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop