【短】あのね、好き・・・
「ねぇ、上向きなよ」
あたしの腕をつかんだまま、彼は言う。
あたしは無言で首を横に振った。
泣いてる顔なんて、絶対見られたくない…
それも初対面の人なんかに。
少しの間の後、彼がボソッと呟いた。
「…あ、先生」
「えっ?!」
う、うそ…
バレちゃった…の、かな…
動揺を隠しきれずにあたりをキョロキョロ見渡す。
だけど先生なんていなくて。
「嘘だよ、そんなの」
笑いを堪えながら言う彼。
恥ずかしくて、顔が赤くなっていくのがわかる。
「…っ!
嘘なんかつかないで…ょ…」
そう言い終えたときにはもうすでに、
彼はあたしの瞳をしっかりとらえていた。