魔法世界−ファントムシティ−


俺はまだぐらつき、少し痛む頭を左手で支えて立ち上がった。


ティアとアミがさっと俺に駆け寄る気配が。


俺は目を閉じたままだったから、それが本当にティアとアミなのかはわからない。


ま、勘ってやつ。


……なんだが――――。


この時の俺の勘が正しければ、今俺達がいる場所は…―――。


「ライト、どうし―――」


「キャアァァァッ!!」


ティアが俺に何か言いかけた時、ティア達の後ろからナナリーの悲鳴が聞こえた。


ナナリーの悲鳴が、その空間に響き渡る――。


続いて、


「グルルルル……」


と言う、獣のような低い呻き声が耳に届いた。


辺りの空気が一瞬にして張り詰めたものになった。


「「…!ナナリー!!」」


アミとティアが叫ぶ。


俺が顔を上げ、目を開いた時にはすでにナナリーの足が地面から浮いた後だった。


「……!!?」


今、俺達の目の前には…―――



全長5メートルはあろうかと思う程大きな黒い物体。


その黒い物体は、一見、狼のような見た目だったが、ただの獣ではない事は明らかだった。


血走った赤い目。
闇のように黒く艶を失った毛並み。
暗闇で妖しく光る生気の無い四つの瞳。
ゆらゆらと揺れる5本の尻尾。



―――…そう、魔獣だ。

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