魔法世界−ファントムシティ−
俺は辺りを見回し、語尾を濁らせた。
生徒も教職員も俺とフィル先生を凝視している。
「…俺に、何の用ですか?」
言葉遣いこそ、生徒としてごく普通の言葉遣いではあったものの、今の言い方は少し挑発的だったと思う。
それは相手も思った事らしく、フィル先生も俺を見てほんの少し眉を寄せた。
「……とりあえず、二人きりで話をしたいから私について来なさい。学園長、彼を少しお借りします」
「あぁいいよ。けれどあまり時間をとらないようにね」
舞台の上の、少し高くなっている段の上。
威圧感のある立派な椅子に座った学園長が静かに頷く。
フィル先生と俺は、痛い程の沢山の視線を背に感じながら、講堂を出た。
「ライト・シルフィー……、お前は一体、何者なんだ…?」
「…はい?」
講堂を出て、しばらくお互いに無言で歩いていると、誰もいない、静まり返った地下室への階段の前まで来た。
そこで俺の前を歩いていたフィル先生が振り返り、一言。
――“お前は何者なんだ?”――
何者、ねぇ……。
随分と応えづらい質問をしてくれるじゃねぇか…。
思わず肩をすくめて首を振り、ため息をついてしまう。
今朝の温かな陽光は、昼間の今、芽吹いたばかりの若葉に容赦なく照り付けている。
先程までは確かに心地よく感じていたはずの春風は、今は背中を伝う冷や汗を挑発しているようだ。
――今ここで‘あれ’をバラす訳にはいかない。
もう、それは本能に従っただけの考え無しな行動と発言だった。
「フィル先生こそ。その朱い瞳……察するに、普通の人間では無いのでは?」
「……!!」