魔法世界−ファントムシティ−
俺の突発的な言葉に、フィル先生は目を見開いて、俺を凝視した。
この世界の人間は――、普通、パステルピンクかスカイブルー、もしくは優しいグリーンの瞳をしている。
勿論、フィル先生も出会った時の瞳の色は、普通だった。
普通の、パステルピンク。
しかし――。
俺にはしっかりと見えた。
燃えるような、灼熱を連想させる朱色の、フィル先生の瞳が。
驚きに目を見開いたフィル先生の瞳の色は、不意打ちを喰らったせいか、朱色に戻っていた。
俺が考えるに…――、
フィル先生は、
“朱雀魅眼<スザクミガン>”だ――。
別名、“阿修羅の眼”。
闘いを好むと言われる戦火の仏、阿修羅。
その阿修羅の分裂した魂の一部が宿ると言う言い伝えがある“朱雀魅眼”を……、
フィル先生が……。
「何故…わかった…?」
「残念ながら、俺も普通の人間ではないので。詳しく説明する事は出来ませんが…」
「そう、か……」
顎に手をあて、しばし何かを考えるような仕種をしていたかと思えば、フィル先生は急にため息をついた。
「やれやれ……情報を聞き出そうとしたら、こちらが聞き出されるとは…」
苦虫を噛み締めたかのような表情で、フィル先生が呟く。
――結局俺は、たいした事は聞かれずに済み、無事に朝礼を終える事が出来た。
朝礼が終わって、ティア達にいろいろ質問されたけど、全部適当に流した。
全く……
入学初日から、散々な目に……。
こんなんでこれからの俺の学園生活、大丈夫なのか…?