魔法世界−ファントムシティ−
「なあなぁ、それやったら、今度の剣術大会の成績も賭けへんか?」
どこからかそんな声が聞こえて、さっきの男子生徒が勢いよく食いつく。
「ルウ!それはいい提案だな!」
「初めまして、やんな?自分、
ルナウル・サティアナって言います〜。仲ようしてな〜!」
男子生徒にルウと呼ばれた朱い髪の男は、俺の前に出て来て、笑顔でそう言った。
朱髪に濃いピンクの瞳。
長めの横髪から時々覗く片耳にはシルバーのピアスが。
イルカ……?
「あ。俺も自己紹介してなかったな、俺は
アイグル・ディガウス。よろしくな」
俺を面倒事に巻き込んだ張本人の男子生徒は俺に屈託のない笑みを浮かべ、言う。
俺は、引きつった笑みを浮かべながら、なるべく自然に名乗った。
「あぁ……俺は
ライト・シルフィーだ。よろしくな、ルナウル、アイグル」
「あー…、自分、普通にあだ名で呼んでくれてええねんで?そしたら、俺も‘ライト’って呼ばせてもらうし」
「ん、わかった。じゃあ……‘ルウ’な?」
俺の言葉に満面の笑みで、大きく頷くルウ。
広大なグラウンドの柔らかな若葉を、春風が優しく撫でる。
穏やかで爽やかな春の午前中。
そこに――
「皆さ〜ん!テスト、始めますよ〜!」
(俺以外にとったら)地獄の時間の幕開けを知らせる声が響いた――。