魔法世界−ファントムシティ−


「ど……どうしよう……。今さら緊張してきちゃったよぉ……」


俺の隣で、先程から同じ言葉を繰り返すティア。


「うぅ……アタシもだぁ……」


「だ、大丈夫だよ……」


ナナリーもアミも、相当緊張しているのか、声が少し震えている。


何を緊張することがあるんだ…?


別に、たいしたことはしないって言うのに……。


ただ、自分の中の魔力を解放して操るだけだろ?


これのどこが緊張するんだよ…。


「じゃあ、男女に分かれて二列に向かい合って並んでください。
まず、物を浮かせる魔法からやってもらいましょうか」


「センセー、何を浮かすんですかー?」


「ルナウル君、いい質問ですね。皆さん、そこにある箒を浮かせてみてください、では、どうぞ」


ハープ先生のその声と共に、皆が一斉に集中し始めた。


だが、なかなか思い通りにいかないようだ。


「「『アップステイ』!!」」


皆して、同じ呪文を何度も繰り返し言う。


そんな事しなくても……。


俺は右手を地面に置かれた箒の上にかざし、目を閉じて集中する。


そして、一言、呟く。


「……『アップステイ』」


すると――…


俺の右手の平に、何か硬い物が当たる感触……。


そ…っと目を開けてみれば、俺の右手には、先程までは確かに地面にあったはずの箒。


まぁ、『アップステイ』くらい、まだ簡単な方だしな。


これくらいは、誰にだって出来るだろ。


「さっすがライト!」


「ライト君が最初の成功者ね」


ティアが目を丸くして言った後、ハープ先生も嬉しそうに目を細めて微笑んだ。


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