魔法世界−ファントムシティ−
………………ってか、
え?
俺が最初………?
『アップステイ』なんて、魔力があれば誰でも出来るような、超初級編なのに?
………んな事ある訳ないだろ。
俺はしばしフリーズしてしまい、箒を落としかけた。
やっとの事で動けるようになった俺は、俺以外に成功者がいないか、見渡してみた。
すると、
「『アップステイ』…」
どこかで聞いた事のある声がそう呟いて、一人の男子生徒の箒が浮いた。
浮いた箒は、そのまま男子生徒の手の平に吸い付くように収まった。
「これくらい、簡単やんか。
なぁ、ライト。ほれ、皆も固まっとらんと、もっかいやってみって。絶対出来るはずや」
その男子生徒は、ルウだった。
な?、とでも言いたげな、まるで同意を求めているかのようなルウの瞳が俺を見る。
俺は何か応えなければいけないような気がして、軽く頷いた。
「『アップステイ』は集中して、上手くいく想像をしながら唱えたら出来る。いわば、初級編やねん」
「………だから、あんまり難しく考えない方がいい。
魔法を発動させるためには、まず、己の魔力を解放しなければならない。でも、極度に緊張していたりすると上手く解放出来ない場合がある。
気楽に考えた方が上手くいく事もある」
「あら、よく知ってるわね、ライト君。二人とも、魔法学には詳しいのかしら?」
ハープ先生のその言葉に、俺は危うくその瞬間過ぎった‘後悔’を態度に表すところだった。
やってしまった……。
こんな風に、《魔法学聖書》に載っているような‘魔法学の基礎’を人前で口にするなんて……。
これじゃあ、自分が何者であるのかを疑問に思えと言っているようなものだ。
俺は、今ここで“自分の正体”をバラす訳にはいかないと言うのに………!
馬鹿だろ、俺…。
「まぁーな。この学園に来る前、親にちょっと教えてもろたんや。
‘アップステイぐらいは出来んとあかん!’ってゆうて」
ルウは明るい笑顔で軽快に説明していく。
ハープ先生は納得したように微笑んで頷き、俺を見た。
「ライト君も、ルナウル君みたいにご両親に教わったのかしら?」