魔法世界−ファントムシティ−
カタカタと揺れながら進む馬車は、物凄く眠気を誘う。
小刻みに心地よく揺れる馬車は、睡魔に襲われつつある俺を乗せ、学園へと向かう。
サラリ…と風が俺の髪を揺らす。
俺の髪は、リオと同じ、太陽の光のような、色素の薄い金髪。
薄紫色の髪の男程じゃないが、男にしては長髪な方だと思う。
毛先が肩に触れるか触れないかの長さだ。
ティアは向かい側に座った仲良し三人組、と言った感じの女子グループと喋っていた。
しばらくすると、大きな建物が見えてきた。
城みたくデカイ。
多分、これが校舎だろう。
大きな扉……と言うか門が威圧感たっぷりに出迎えていた。
馬車ごと門をくぐり、学園の敷地内に入る。
広い舗装された道の両脇は、色鮮やかな美しい花が植えられていて、春の華やかな雰囲気がそこらじゅうに充満していた。
「皆さん、これから校舎に入りますが、上級生に誘われても決して私から離れないようにして下さいね?」
「「はぁ〜い」」
薄紫色の髪の男が俗に言う、悩殺スマイルを振り撒きながら言う。
半数以上の女子が語尾にハートマークを付けたような、女子独特の甘ったるい声で返事した。
教員であろう男は困ったような表情でフフッと笑った。
まぁ…生徒に惚れられても困るだろうな。
俺は同情するような気分でチラとだけ男を見た。
その時、目が合ったのは、気のせいだろうか…。
「……で、ここが講堂だよ。ここで学年集会とかするからね、覚えておいた方がいいよ。じゃあ、ここまでで質問は?」